仕掛け時計のある風景
りゅうのあくび

ホワイトノイズは
部屋で夏空を包みながら
白壁に掛かる孤独な
仕掛け時計の秒針が
いつのまにか
こつぜんと沈黙している
とても古い悠久にある
哲学をゆっくりと紡ぐ
みたいにして

時計がもはや
停まろうとしていた          
儚いほどとても短い
一瞬のあいだには
小さな物語がある

まるで恋人の
眼差しを映す瞬間を
想い出すように
仕掛け時計の秒針が
差す刹那には
恋しい人とかわした
約束がある

ちょうど
静寂のなかにあって
世界を点検しはじめる頃には
何もかもが
インクで転記された
数字が揺らいでいて
色彩のある記号のように
空中分解して
神さまというcharacterは
いてほしいと思う
命にのみ
宿ろうとするもの
ではないだろうけど

すべてというものに
等しい言葉さえ
それは自由だったりする
とても静かな
「if」の世界がある
神さまも
仕掛け時計でさえも
恋の行方について
真実をまだ伝えてはいない
      
時計によって映された
世界の終わりの幻を
視ることができたとしても
時間が停まると
恋する人への約束でさえ
なくなってしまう
仕掛け時計を
修理することを
恋人にも伝えることにする

時計はまた
動き出す         

人間という命は
悠久のはざまにあって
まるで血液が循環する
輪廻のなかで
それは運命と呼ばれる
ものかもしれない
夜明けに昇る
きらめく太陽のひかりを思う
目覚めのときのように
近くを巡っている

世界の終わりには
その輪廻がまわるのを
いつしかやめて
しまうとしても
窓辺からこぼれる
明るい陽射しに
軽い目眩のような
恋人への想いが
散りばめられた愛の欠片
だってあったりする

だから
停まっている
仕掛け時計を見ると
ときめきを覚え
少し胸騒ぎがする


自由詩 仕掛け時計のある風景 Copyright りゅうのあくび 2008-07-12 10:35:54
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Lovers Fantasy