2003 4/13 8:00 pm @ Sibuya 
服部 剛

時折街を吹き抜ける 
生ぬるい風の嘲笑を背に 
雑踏に紛れた孤独な旅人は 
口を結んで今日も 
スクランブル交差点を渡る 

( 寂しさは 今にも唇から 溢れそうだ ) 

古本屋の棚に並ぶ 
背表紙の一冊は「幸いの泉」 
色褪せた題字に 
呼ばれるように取り出し 
頁を開く 

古本屋を、出る。 
赤信号に、立ち止まる。 

いつかの不器用な恋は 
足元の水溜りに濡れた 
レシートの紙屑と 
先っぽの折れた煙草 

青信号に、歩み出す。 
人波はアスファルトに敷かれた 
白い梯子を覆い隠し 
今夜もモヤイ像は 
待ち合わせの恋人達に囲まれる 

イブの夜、頼りない指先に 
温もりをくれたひとよ 
今 君は 何処に・・・? 

ハチ公前で唄う 
名も無き唄歌いが弾き語る 
風に消える
LoveSong 

「 僕は 今も ここにいる 」 

唄声を背に旅人は 
群衆の海の一滴となり 
駅の入口に
吸いこまれる 





自由詩 2003 4/13 8:00 pm @ Sibuya  Copyright 服部 剛 2008-07-02 05:07:54
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