浜辺の樹木
服部 剛
詩友がマスターをする
「 ポエトリーカフェ 」の本棚から
手にした詩誌を開いたら
昔別れた
サングラスの詩友が
モノクロ写真の四角い枠から
「 調子はどうだい? 」と微笑んだ
写真は某ローカルFMのスタジオで
僕が番組をやっていた頃と
肩を並べるメンバーは変わり
サングラスの君以外は
見知らぬ顔で
あの日の友情に
罅
(
ひび
)
を入れた
僕の過失の鈍い痛みは甦り
モノクロ写真の君に
今更ながら、詫びるのだ
閉じた詩誌を本棚に戻して
次に目に入った「 出会うため 」という
詩集を手に取り
レジに立つマスターの詩友に
( これ、買うよ )と手渡す
レジを打ったマスターから
手渡された「 出会うため 」は
数年前に終の棲家の鎌倉で
密かに世を去った老詩人の
遺言書の重さに
もう一つの記憶が甦る
某ローカルFMで
詩の番組をやっていた頃
老詩人のその人から
若い僕に一通のメールがあり
ささやかな声援を贈ってくれた
紅葉する秋の老樹が描かれた
「 出会うため 」の表紙を開くと
老詩人は浜辺に独り
樹木の面影で
立っていた
老遠い水平線の彼方に
いつまでも
目を細めて
自由詩
浜辺の樹木
Copyright
服部 剛
2008-07-01 00:14:23
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