ありとあらゆるあらいもの
木屋 亞万
食器を洗う熱湯
湯気、水流弾ける音を
換気扇が吸い上げていく
じゃばざ
じゃばばばビタばば
つるるろるうう
きゅんと蛇口を締めて
前掛けを擦り上げるように
手の水分を拭き取る
捲くり上げた袖を押さえていた
金属ゴムのような止め具を外し
小銭だらけのポッケに入れる
チリンリと鳴る、今日の仕事を
終わらせる蓋みたいなものだ
ぱわはらはらと名残惜しそうに換気扇
急速回転の余韻に浸っている
だらしの無い蛇口からはタッぽたッ
水が滴り落ち、流しで砕ける
時計の針より少し遅くタポっタポ
電灯の紐が引っ張られ
回路の切り替わる気配がする
ほの暗い朱の光、紐の尾が
絶好調に跳ねたのち静まり
一日の生活は終わりを告げる
明日は生も終わるかもしれない
そんな歳になった