ありとあらゆるあらいもの
木屋 亞万

食器を洗う熱湯
湯気、水流弾ける音を
換気扇が吸い上げていく

じゃばざ
じゃばばばビタばば
つるるろるうう

きゅんと蛇口を締めて
前掛けを擦り上げるように
手の水分を拭き取る
捲くり上げた袖を押さえていた
金属ゴムのような止め具を外し
小銭だらけのポッケに入れる
チリンリと鳴る、今日の仕事を
終わらせる蓋みたいなものだ

ぱわはらはらと名残惜しそうに換気扇
急速回転の余韻に浸っている
だらしの無い蛇口からはタッぽたッ
水が滴り落ち、流しで砕ける
時計の針より少し遅くタポっタポ

電灯の紐が引っ張られ
回路の切り替わる気配がする
ほの暗い朱の光、紐の尾が
絶好調に跳ねたのち静まり
一日の生活は終わりを告げる

明日は生も終わるかもしれない
そんな歳になった


自由詩 ありとあらゆるあらいもの Copyright 木屋 亞万 2008-06-18 01:14:18
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