空中炭素固定法
海野小十郎

 空中炭素固定法

 私は長い間、空気中の炭酸ガス除去法を考え続けていたが、今日いちおうのアイデアだけを獲得した。これは日ごろ信仰している神の知恵をお借りしたものであると、確信している。
 つまりこうである、大きな希塩酸の溶液の中に空気をくぐらせるという方法である、空気は風力によって吸入する。
 塩化炭素というウキペディアの項目をクリックすると、不燃性であり消火剤として用いられる4塩化炭素というものがあった。毒性がありオゾン層の破壊に影響するということである。しかしこの物質ができるとは考えられない。空気中には窒素も酸素もある。実験してみなければわからないが、とにかく炭素を固定する役割があることが想像される。
しかし待てよと考えた、塩化炭素は燃えないが、炭化窒素は燃えるかもしれない、ひょっとすると炭化水素も取れることができるとも考えられる。炭化水素はアルコールではないか。アルコールが空中から得られるまたとないチャンスではないか。
そしてさらに、溶媒液について酢酸や硝酸や硫酸にも考えを及ばした.そのうち硝酸液がもっともうよいのではないか、それも希硝酸ではなく濃硝酸がよいと思う、そのほうが反応が早く、効果的と考える。
この薬剤を用いる装置は各家庭の換気扇につなぎ硝酸液と吸気の混交を図り世界の炭化酸素を取り除き空気を正常化することができる。地球の未来はかくして守られるのではないか。またこの装置は発電所やそのほか2酸化炭素の排出の最も多い場所に設置を義務づけるとよいと思う。簡単なアイディアに過ぎないが。誰か真剣に取り組む人はいないものか。
それから一日が過ぎた、私の作ったこの論文の断片を友人である東大で量子化学をやった友人にみせた。友人は言う。グッドアイディアだと、確かに塩酸水に空気を吹き込めば、空気中の炭酸ガスと塩酸が作用して炭酸ができるというのであった。
私のアイディアはいちおうここまでである。炭酸から炭化水素をどのように取り出せるかこれさえできればこの方法は成功である。
読者の皆さんこの方法を考えて欲しい。エネルギー保存の法則、質量不変の法則この二つの原理に感謝せねばならない。これこそ人類に与えられた大きな知恵である。 



散文(批評随筆小説等) 空中炭素固定法 Copyright 海野小十郎 2008-06-08 15:56:12
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