新・365歩のマーチ 
服部 剛

終電近い電車を降りて 
人もまばらなさびしい道を 
今日一日の労働の 
汚れた作業着つめこんだ 
きんちゃく袋をぶら下げて 
今夜もおいらは闊歩かっぽする! 

思い出すのは 
子供の頃のお茶の間で 
たまたま見ていた歌謡ショー 
「365歩のマーチ」を歌いながら 
( いっちに!いっちに!)と腕を振る 
着物姿の水前寺清子 

仕事帰りの深夜の道で 
今日の疲れを吹き飛ばそうと 
( いっちに!いっちに!)と腕を振る 

ふところが寒かろうと 
仕事でしくじろうと 
ほれたおなごに逃げられようと 
びくともしないおれさまは 
職場の老人ホームでは 
認知症のばあちゃん達に囲まれた 
三枚目のアイドルじゃ  

人もまばらな深夜の道で 
汚れた作業着つめこんだ 
きんちゃく袋をぶら下げて 
時々しんみり痛むハートを隠しつつ 
けせらせらせら闊歩する。 

まだ 
ぶざまな自分を 
笑い飛ばせそうさ 

まだまだ 
ずぅーっと遠くまで 
気の向くままにゆけそうさ

海の潮騒へ
すいこまれるように伸びる
夜道の向こうに 
まだ訪れぬ 
夜明けの幕が上がるまで 

汚れた作業着つめこんだ 
きんちゃく袋をぶら下げて 
いつのまにやら 
誰もいない深夜の道を 
鼻歌まじりに 

路面におどけた影を躍らせ
今夜もおいらは闊歩する! 








自由詩 新・365歩のマーチ  Copyright 服部 剛 2008-03-04 21:36:55
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