春風
こゆり
芽吹きの季節とはいえ
冷たい風が菜の花を揺らし
川面を颯爽と走る
光が流れていくのを
ただぼんやりと見ていた私は
纏わりついた髪をすき
静かに歩み始める
荷物は案外少なかった
あんなにごった返したデスクが
今はすっかり主を失っている
ずっと誰かのせいにしていたけど
背筋が伸びなかったのは
手の届く範囲にあふれすぎていたから
そのどれもが
暖かく必要なものだと
思い込んで
そこから立ち上がるのは
寂しいけど勇気がいるけど
私の決めたこと
ほんの少しすがすがしい気持ちで
私を好きになる
冷たい風が菜の花を揺らし
川面を颯爽と走り去る
少し背が伸びた私は
歩みを止め振り返る
冷たい風を頬にうけ
ゆっくり一礼する