春風
こゆり

芽吹きの季節とはいえ
冷たい風が菜の花を揺らし
川面を颯爽と走る

光が流れていくのを
ただぼんやりと見ていた私は
纏わりついた髪をすき
静かに歩み始める

荷物は案外少なかった
あんなにごった返したデスクが
今はすっかり主を失っている

ずっと誰かのせいにしていたけど
背筋が伸びなかったのは
手の届く範囲にあふれすぎていたから
そのどれもが
暖かく必要なものだと
思い込んで

そこから立ち上がるのは
寂しいけど勇気がいるけど
私の決めたこと

ほんの少しすがすがしい気持ちで
私を好きになる

冷たい風が菜の花を揺らし
川面を颯爽と走り去る

少し背が伸びた私は
歩みを止め振り返る
冷たい風を頬にうけ
ゆっくり一礼する


自由詩 春風 Copyright こゆり 2008-02-26 22:14:22
notebook Home 戻る