夫婦の食卓 
服部 剛

喫茶店で読む 
本を閉じて 
顔を上げると 

昨日の散歩中 
ふたり並んで覗く 
川の水面の鴨達に 
袋から餌を蒔いていた 
夫と車椅子の妻が
僕の前の席に座り 
テーブルに置かれた 
苺パフェを挟んで 
向き合っていた 

妻は歩けないので 
夕食はいつも  
この店に来るらしい 

運ばれた夕食を 
それぞれの箸で口にする 
ふたりの間の壁に貼られた 
ゆげの昇る鍋のポスター 

「あつあつすーぷであったまろ・・・」 

白髪交じりで直毛の夫は 
テーブルの真ん中に立つ 
苺パフェの赤い実をつまんで
口に入れる 

少し目尻を下げた妻は 
黒縁めがね越しに 
口数の少ない夫を 
ながめる 








自由詩 夫婦の食卓  Copyright 服部 剛 2008-02-24 20:06:15
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