ひかりの夜道 
服部 剛

仕事帰りの人波に紛れ 
手を繋いだ老夫婦が 
通りすぎていった 

耳に入れたイヤフォンから 
「ベル」という唄を聞くと思い出す
もう会うことも無い
いつかの君の猫なで声 

少し離れた空の下 
「ただいま」 
「おかえりなさい」 
受話器越しに交わした夜 

( 老夫婦のうしろ姿が
( 吸いこまれた
( 人波の向こうに
( いつまでも消えない  
( ふたりの繋いだ手 

路地裏に入ると 
まばらにうつむく街灯の下 
淡いひかりの夜道 
暗闇にのびる





自由詩 ひかりの夜道  Copyright 服部 剛 2008-02-20 23:25:21
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