二月一日
水町綜助

電車の中で目を閉じている
線路の小さなおうとつに床板が小さく震え
進んでいくのがわかる

まひるに
道路の上で
ビルに両端を
切り取られてしまったひなたで
ぼんやり煙草を吸っていた
その道は坂道で
僕は駐車場のフェンスを背に立って
道に向かっていた
一時を回ったばかりの
2月1日は
明るすぎるほどに青くて
茶色がかった舗装路も
からすも濡れ羽が仄青くて
風が吹いている静かな
動きで
影が伸びている
街頭の
点灯していない
黒さが

息が白くない
吐く息、息が
取り返しもつかなく
流れる車中のそと
縦横
無尽に流れている
やはり僕の視界のきれたさき
暗くも
明るくもない外で

穏やかな早さは
心臓とは違う早さ
プラスティックと同じで
記憶とそぐわない劣化
鉄は心臓にちかく
舌で舐めれば尚更
僕の鋳てる鉄
あのひとのニクロム
手に巻き取った束を
離した
青臭い空の下で
影法師を踏まずに
踏んでいた
足を離して
導火線として
発火させた

誰かが踏んだ
また
踏んだ
火を消して
君はさようなら
さようなら

知らない町へ
ゆくんだね
僕はそんな名前じゃない
呼ばないでください

オートバイや自動車がすきなのは
準備をしているんだ
こよみをめくりつづけるそれと空気のにおい
鉄に空の色が映れば
においがかげるから
遠いところでやってごらん
思い出すことは何もない
あったとしても
なつかしめばいいだけ
こんな風に
頭痛もしない程度に
話すことも
尽きる程度に
こんな風に

それでもう
尽きたから
さようなら


自由詩 二月一日 Copyright 水町綜助 2008-02-07 02:21:24
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