たそがれたからす
一般詩人-

僕たちはくろぐろとした息を吐きながら
紅く焼けた眼球をめぐらし
たそがれたからすの一群を
惜しみ惜しみ見送った
坂と階段の街半ばのこと

ともに見守るおとこのことをすこし
みなが半月と呼ぶおとこがいる
半月は片身がしおしおに萎れている
しけった和紙のように萎れている
片やの半身は春のたんぼのように黒く
健康な薫りを馥郁と発している
陽のにおいのする半身には
幾重にも蝶がまつわって衣をなしたが
僕たちは
萎れた半身のまぶたに雫が膨れてゆくのを
紅く焼けた眼球の奥底から見ていた

ともに見守るおんなのことをすこし
みなが彼岸花と呼ぶおんながいる
あかぐろい濃霧の中で産まれ
硬質なロジックの回廊ではぐくまれ
彼岸花には生来心臓がなかった
ただ毒ばかりその身にもち
食いついた者ののどを陰惨な血でそめあげた
時が経ち
彼岸花にようやく心臓が生りはじめたころに
服毒者たちの怨念が雨垂れる汗を血に変えてしまった

僕たちはしかるべき理由により
こうして坂と階段の街半ば
紅く焼けた眼球をめぐらし
たそがれたからすの一群を
惜しみ惜しみ見送っている

萎れた片身と血の汗とをふれあい
たそがれた街の天の鐘に向きくろぐろと息を吐き続けながら


自由詩 たそがれたからす Copyright 一般詩人- 2008-02-03 23:50:43
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