ピンク色のコンドーム
快晴

ゴミ箱の中にはピンク色のコンドーム
先端の方には濁った白い液体
朝起きて一番最初に目に付いた物が
そんな物であることに僕は小さく舌打ちをする
隣であどけない顔で無防備に寝ている女と
昨夜の彼女のSEXの最中の顔を思い出し
その距離を埋めようと試みる

とりあえず僕は立ち上がり
洗面所で昨夜のキスを洗い落とす
洗い落としたのはキスだけか…
鏡にはもう見飽きた男の顔が映し出され
その後ろには当たり前の様な顔をして
「今日」という名の日常が横たわる

使い古された黒いテーブルの上には
抗欝剤やら睡眠薬などの薬の
空のケースが散らばっている
それらを僕はかき集めると
失望と共にゴミ箱に投げ入れる

インスタントの珈琲を少し濃い目に入れ
1本目の煙草に火を点けると
寝惚けた脳味噌もやっとゆっくりと動き出す
彼女はまだ起き上がる素振りを全く見せず
僕は今日が何曜日なのかさえも分からない

音量を小さく絞りテレビを点けると
またどこかで誰かが殺されたという
そんないつもの聞き飽きたニュース
チャンネルを変えれば
得体の知れないどこかの批評家気取りが
モラルがどうのと熱弁している
そんな物がまだこの国に存在するなら
一度はこの目で拝んでみたいね

やり場のない気持ちを持て余し
それを煙草の煙と一緒にゆっくり吐き出す
2杯目の珈琲を入れようと立ち上がると
足音に気が付いたのかやっと彼女が目を覚ます
「うん…、もう起きてたんだ?」
「あぁ。」と、
自分でも気付く位に愛想のない言葉を返す

そんなありきたりな朝のやり取りに
僕はまた今日への希望をすり減らす
なんとなくそんな自分の存在が
さっき見た、ゴミ箱に捨てられた
コンドームに重なって思えた
使用済みのピンク色のコンドーム


自由詩 ピンク色のコンドーム Copyright 快晴 2004-06-24 23:54:20
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