盗賊
あおば

                    07/02/01


あかり/光/アート展、を見てきたが
帰り道、汐留駅の遺跡に立ち寄って
明治初年のレールの切れ端、犬釘、工具
機関庫の前に佇む機関車の勇姿を
どうにか留める印画紙を見ていたら
その頃の女盗賊お新のことを思いだす
入れ墨をした武士の娘とはいえ
女の身でブラックホールを辿るのは
針の穴に糸を通すよりも
真っ黒な龕灯を振り回すよりも遙かに難しいのは知ってはいたが
陸蒸気がポッポと走るのだから
ブラックホールだって
ホールインワンするつもりで
何度も攻撃すれば
突破する抜け道も見つけられるかもしれない
それはどうだかしらないが
徒党を組んで夜ごとに盗みを働いて
捕まって厳しいお裁きを受けて
脱獄して
また捕まって
長い刑期を勤めて釈放されて一年後
あっけなく
流行病でなくなった
遺言で残した全身の入れ墨が今に伝える龕灯の重さを右腕で直に確認してから
明治初年に和蝋燭は一本いくらしたのだろうかと盗んだ光の価格を考えた。




タイトルは「poenique」の「即興ゴルコンダ」より。


自由詩 盗賊 Copyright あおば 2008-02-02 00:20:00
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