創書日和「靴」 靴はいつでも痛んでしまう
大村 浩一

いつでも急いで履くし
履きかけで何歩も歩いてしまうので
かかとから靴はいつでも痛んでしまう
妻も老いた母からも
もっと大事に履けとか
みっともないから止めろと言われるが
そういうことに構うのが嫌で
靴はいつでも痛んでしまう
靴べらを持ち歩けと
何度も買わされ持たされたが
その度にすぐなくすので
靴はいつでも痛んでしまう
そんなに雑にするならもう靴は買わない
とまで妻に言われたが
それでも結局かかとを踏んで
靴はいつでも痛んでしまう
そういうことに構うのが嫌で


背広で床に座って朗読を聞く
会場に着くのはいつも遅くて
椅子席は大抵塞がっていて
でも疲れるのは嫌なので
前の列か通路に出て
背広で床に座って朗読を聞く
尻が破れるとか膝が抜けるとか
母にも妻にも言われるが
そういうことに構うのが嫌で
背広で床に座る


フケだらけの奴が居る
腸(はらわた)を見せている奴が居る
フケや腸を見るのは嫌だが
見せるからには見せるだけの理由が
奴にはあるのだと思って見ている
それが奴だけにしか
分からない理由であっても


2008/1/30
大村 浩一


自由詩 創書日和「靴」 靴はいつでも痛んでしまう Copyright 大村 浩一 2008-01-31 23:35:53
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