にぎやかな街
千波 一也
にぎやかな街を生むものは
孤独なのだと思います
ひとりぼっちで
とても寒かったあの日
逃げる、という行いそのものに
迷い込んでしまったあの日
わたしが覚えたものは
背中だったと思います
必ずちがう
ひとの暮らしの
その、寒さの投げ捨て場のように
すれ違いながら、ひとを
わたし、すれ違いながら
にぎやかな街で
泣いていました
語らぬ雪が
やけにきれいで
理由の無いものごとに
別れを惜しむ一方でした
急ぎ足が得るものは
むやみな暑さと冷めてしまう時間
助かるための方法を
電飾にたずねても
あらためて
沈黙の夜、
でした
寄るものはいつも
似てしまうのでしょう
置き去りの後悔が
なによりも
言葉でした
新しさは古くなるので
なるべくならば繰り返さぬよう
聞いています、
いま
いつかの昔が
まだまだ遠くと思えるうちは
よみがえり損ねて痛むでしょう
にぎやかな街の
もっとも片隅にある、
路上において
問うでしょう