明日みる光
水町綜助

百人が頭を垂れ
ひと部屋を虫食い
穴を開けつづける
開いたところから
次々
空が透けてゆき
部屋に草木そうもく
匂いが立ちこめる
僕はその末席に
すわっている
亜熱帯
にわかあめに
塗れるように
嗅いで

通路が一本
百頭を分け
屋外の
渡り廊下へと繋がる
つながり行く先に
七つ季節が
風車くらいには速く
いきしにを繰り返している
そんな影絵が見えて
僕は右目が痛い
瞼の裏
そのさして深くもない
いつも暗いところ
その中でワイヤが張られている
何の為かもわからずに
張られ
痛く
ぶれて
それは右半身に
波打ってゆき
僕はゆっくりと
俯いてゆきながら
末席にすわっている

右目をつよく瞑る
虫食いの空だけが
赤い緑に
ひろがる様は
雨だれの王冠
その潰れるまでのはやさ
そしてもちろん
ゆっくりと収束してゆく
惑星の爆発みたいに

もっと
つよく瞑れ
ちいさく
colorfulな光の粒が
無数に見えるだろう
あつまって
うねっては
翻り
結晶したなら
すぐに破裂するはずだ
こいつが金平糖や
細胞よろしく
天地を含むなら
なにを考え
なにをする
やつらがいる?
太陽の円環のうちで

目撃のために

針の先になってそのあと
旅客機の視線になる
視線から
僕は丸まり
巻き込んで
球状に割れ
太陽か虹を
選ぶことになる
太陽は目を焼き
虹は太陽を背にして
はじめて瞳に映るのだ

  *

水がほしい
ぼくが
みとれたのは
光にとばされたきみ
そのかわいたからだにふれ
のどが渇き
けっきょくほしがったのは水
きみはすくった水を
ぼくにのませた
うるおったぼくは
きみのぬれた手をみて
うつくしくなくわらった
きみはのこった水を力いっぱい
そらへほうって
わらってひとこと
まぶしくて顔がみえない と

太陽を背にしたぼくには
きみの顔がはっきりとみえた
おおきな空の魚のうろこの輝きのしたで



目を開いて
顔を上げた
天井は落ち
目が痛いのは
長すぎる前髪のせいで
隙間から見る
窓の外には
夏の巨大な太陽がただおちていた









自由詩 明日みる光 Copyright 水町綜助 2008-01-22 16:35:12
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