ビールの泡
柚木

ビールのね 泡だけを飲めばいいんだよ

泡だけならお酒じゃないんだよ


子どもという妙な枠組みの中にいる僕たちの
小さな小さな世界の中で
小さな小さなグループの
リーダーであるけんちゃんは言った


これなら 俺達だってお酒がのめるんだ

大人なんだぜ


泡ならお酒じゃない
お酒を飲める
そこに矛盾はあるのに
僕らはなんだかすごいことに
気づいたような気がしていた


振ればな 泡が増えるんだ

コーラと一緒なんだよ


にやっと笑っていったのは
この缶ビールを持ってきたしんやだった
僕らは夢中になって
缶を振った


缶のプルタブに指をかける


ぷしゅっと言う音と共に
一斉に顔面を泡だらけにした僕たちは
確かに大人になったと思う


それはとてもとても苦かった


自由詩 ビールの泡 Copyright 柚木 2008-01-09 21:48:53
notebook Home 戻る  過去 未来