進化する
木屋 亞万

新しい年の最初の日
朝起きたら羽根が生えている
きっと人間の進化した姿なのだ

翼を広げて大空を飛び回っている
きっと気持ちいいのだろう
高度の維持に必死でよくわからない
俯瞰する町は青々と綺麗だ
山を越えて入り江を通り過ぎる
人が多い都市は赤潮みたいに汚れて見える

真昼の月が語りかけてくる
君の夢はじきに君のものではなくなる
夢は君の一部分ではない
対立されるべきものなのだ
二元的に見ればの話だがそのうち君は夢に支配される

これはまだ現実だ
夢は遠くにいる
進化は思っていたほど
素敵なものではなかった
血生臭いものだった
進化は変化ではなく生き残りと増殖なのだ
多様さのための犠牲が存在し
私は地上を離れなければならなかった

雲で暮らすのは中々コツがいる
慣れるまでは大変だった
散らかってもいないのに足の踏み場もないのだ
地上から見つからないだけでも素晴らしいと思わねばならない

存在し続けたければ一番には決してならない事だ
高等な奴らは身動きが取れない
すぐに滅び崩れ消えるのだ
月がなぜ白いのか君は知らないだろう
砂浜がなぜ白いのか知ってるかい
たくさんの女性が色を失った証なのだよ
ところで君の骨はまだ赤いのだろう
色を奪った君の骨じゃないか

飛び続けてどれだけ経つのだろう
雲平線から見る日の出にも慣れた
飛びながら眠る術も学んだ
鳥との会話を早く覚えたい
まだ挨拶もろくにできないから

もう君は人を見る事はできない
空には君の他に誰もいないからね
鏡がなければ君自身を見る事さえできない
影は不安を写すだけだ
そして君は今日も仲間を探しに行くんだろう

赤が広がる入り江を抜けて今日も青い町を見に行く
昼間の月が大きすぎる穴を
空のど真ん中に開けている
私はもうすぐ夢に呑まれるかもしれない


自由詩 進化する Copyright 木屋 亞万 2008-01-06 01:04:53
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