三匹の野ねずみ

三匹の野ねずみの兄弟
チッタ チッチ チットのおはなし

三匹の野ねずみの兄弟たちは
仲良く暮らしていた
しかし
食べ物を取りに行くのは
いつも長男のチッチ
めんどくさがりやの次男チッチと
臆病な三男チットには
チッタはいつも不満ばかり

ある日 珍しく三匹が一緒に外を歩いていると
大きな猫がやってきた
すると 一目散に
三男のチットは逃げてしまった
めんどくさがりやの次男チッチも戦わず
勝気なチッタだけが勇ましく戦った
けれども やはり猫にはかなわず
前足の下で悔しがる

お正月のお屋敷
こわい猫の これまたこわい主人の部屋
人々が着飾って集まっていた
なぜなら ねずみたちの大レース
職人達がこの日の為に
山あり谷あり綱渡りありの
障害物だらけのコースを作って待っていたのだ
怖い猫も着飾って ねずみたちを睨んでる

「ああ、もうだめだ。」
珍しく弱気になるチッタ
「ふわあ。俺に考えがあるよ。」
あくびをして起きたチッチ

ヨーイ! スタート!
鐘が鳴るも ねずみたちはうごかなかった
よろよろよろけて止まってしまう
どうなってるんだ? 主人が手を入れた
その時
ガブリ! チッタが噛みついた
今だ! チッチが叫んだ
止まっていたねずみたちは目を輝かせて
一斉にレース場から逃げ出した

大混乱
婦人達は悲鳴をあげる
紳士達はやっきになるがつかまらない
こいつめ! 
主人がチッタをつかまえた 
その時
ガブリ!
主人に何かが噛みついた
ようよう床に逃げたチッタが顔をあげると
最初に逃げたチットの満面の笑みが目の前に
「兄ちゃん、こっちから逃げられるよ!」
「でかした!」
二匹は人々の足をすり抜けて
壁の穴へと一直線

しかし 急ブレーキ
あの怖い猫が立ちふさがった
チッタは飛びついて噛みついてやろうとしたが
またもや 前足の下で悔しがる
震えるチットに 猫が舌なめずりをして
大口を開けた
その時
ガブリ!
次男 チッチの鋭い歯が猫の背中に追いついた
フギャー! 
猫は慌てて退散し 
三匹は屋敷からうまく逃げおおせた

「さすがは俺の弟達だよ!」
長男チッタは 嬉しそうに弟達を褒め称えた
しかし
次男チッチは横になって もう寝ている
三男チットは猫の仕返しに怯え 隅っこのほうで震えている
腹が減ったなあ
チッタはちらりと二匹を横目で見たが
「まあ、いいさ。」
今日は笑いながら 
外へと出かけて行ったとさ



(おしまい)


          


自由詩 三匹の野ねずみ Copyright  2008-01-01 19:30:32
notebook Home 戻る  過去 未来