治療行為
もろ

手ごろなサイズの
透明の瓶の中から
一番不安定な私を一人
選び出して
ピンセットで摘まみ出す。

自由になった筈の私は
瓶の外では生きていけない。

彼女が放り出されたのは
なにかのお仕置きなんかではなくて、
なにも
悪いことなど
してはいなかった、
のに。

瓶の中では
ぴたりと
波が止んで、

翌日
何人かの私の死体が
瓶の底に沈んでいた。
それを片付けるのは
私の仕事で
お墓をつくるのは
私の仕事ではなくて、

彼女たちのお墓はつくられない。

色の濁った水の中で
不安定な私がつくられるのを
期待しながら
いつもより余計に
固く瓶の蓋をしめよう。



自由詩 治療行為 Copyright もろ 2007-12-31 03:50:49
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