雪むし
恋月 ぴの
最初は綿ぼこりかと思った
小さな白い塊が
ふわふわと目の前に浮かんでいた
疲れた目の錯覚と決めつけてはみたが
白い塊はその数を増し
やがて
小雪でも降り始めたかのように
凍えた集会室の静寂をふわふわと漂う
言霊と言うものがあるとするならば
言おうとしても言えなかった
伝えようとして伝えることの叶わなかった
言葉のひとつひとつが
このような白い塊と化して闇に舞うのか
古い暖房機は会議の声を掻き消そうと
相変わらず駄々をこねている
それでも次第々に
かび臭い集会室の空気を暖めだすと
ふわふわと浮んでいた
白い塊はその姿を何処かに隠し
傾いだ長机から言葉尻を捉えようとする
ボールペンの小刻みな音が忙しく時を追い立てた