ぼくが遅れてきたからね
佐野みお

ぼくが遅れてきたからね
君のことが見つからなくても
しかたのないことなんだ

いつも遅れてしまう
バスにも試験にも
日焼けしたり、泣いたりするのも
少しだけみんなより後で
時計やカレンダーを怨めしく睨む

場所を間違えたことはないのに

そこにたどり着いたとき
名残りだけがあって
それは足跡だったり残響だったり
それから置き手紙だったりした

約束なんてもうしたくないな
待ち合わせしたくないな
偶然を紡いでやっていけたらいいな
逆算することは苦手なんだ

君がきっと逆算していたころ
ぼくは浮き浮きしていただけなのに
あふれそうな何かを
懸命に抑え込んでいるうち
部屋を出るのが遅れただけなのに

でも遅れてきたのはぼくだから
君と会えなかったことは
しかたのないことなんだよね


自由詩 ぼくが遅れてきたからね Copyright 佐野みお 2007-12-18 20:54:41
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