ぼくが遅れてきたからね
佐野みお
ぼくが遅れてきたからね
君のことが見つからなくても
しかたのないことなんだ
いつも遅れてしまう
バスにも試験にも
日焼けしたり、泣いたりするのも
少しだけみんなより後で
時計やカレンダーを怨めしく睨む
場所を間違えたことはないのに
そこにたどり着いたとき
名残りだけがあって
それは足跡だったり残響だったり
それから置き手紙だったりした
約束なんてもうしたくないな
待ち合わせしたくないな
偶然を紡いでやっていけたらいいな
逆算することは苦手なんだ
君がきっと逆算していたころ
ぼくは浮き浮きしていただけなのに
あふれそうな何かを
懸命に抑え込んでいるうち
部屋を出るのが遅れただけなのに
でも遅れてきたのはぼくだから
君と会えなかったことは
しかたのないことなんだよね