やさしいおもいで
hope


 
 
 
ふらつきながら繰り返した。
あなたの、その仕草だけが残ってる。
新しい季節は、私だけを置いてゆくけれど、終わらない季節の始まりは、いつだって私に優しいの。

 遠い、遠いよ。

思い出だけが、どんどん綺麗になってゆくのね。
立ち止まったまま、手を振る私は、ちゃんと、笑顔になれていますか。

 内緒だよ、
 秘密だよ、

暗いから見えないんじゃないの。
暗いから怖いの。

本当は、それだけじゃない。
耳鳴りが、頭の中でずっと鳴り続けているの。
だから、なにも聞こえないの。
だから、
あなたの、その仕草だけが残ってるの。





酷い夢で目が覚めた朝。

背中を丸めて身構える。
押し寄せる思い出は、溢れた雫が乾くまでのあいだだけ。
遥かに遠い雲からの便りは、私にはまぶしすぎるの。
それでも溢れ出すの。
どんなにこらえても、感じきれないまま。
そんなの全部、わかっているんだけど。

あなたの声が聞こえる。
偏ってしまった、思い出、の、谷間から。


(ねえ)


もう一度だけ、声を聞かせて。





自由詩 やさしいおもいで Copyright hope 2007-12-07 23:57:08
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