りんごの詩
恋月 ぴの

りんごを食べたら
なつかしい故郷の味がした

と言ってはみたものの
この街で生まれ
この街で育ったから
故郷らしい故郷なんてどこにも無いんだけど

でも、不思議なんだよね
ひとくちかじると
りんごの木がふんわりと浮んできて
枝が折れそうなくらい実ったりんごたち
そして
そのりんごたちを慈しむかのように
ひとつひとつ大切に収穫する
てのひらの温もりを感じてしまう

「他の果物でもいっしょだろ」
だなんて余計なつっこみされてしまいそうだけど
わたしにとって
それはみかんでも無いし
ぶとうでも無くて

今年の雪の訪れ
例年に無く早いみたいで
収穫前のりんごにも大きな被害出たらしい
白い帽子に震えるりんごたち
かわいそすぎる気がする

そうなんだよね
お母さんの作ってくれたおにぎりと一緒なのかな

つくるひとの思いがこもった
りんご
テーブルの上にまだひとつ残っている

手に取って良く見てみれば
ちょっとそっくり返っているようで
ちょっと誇らしげそうな横顔がつやつやで

そんなりんごを
ひとくちかじってみれば
なつかしさが涙腺にいたずらでもしたのか

ほろり涙は頬をつたって







自由詩 りんごの詩 Copyright 恋月 ぴの 2007-11-28 22:02:27
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