十一月
チグトセ

物語にも詩にもなれない言葉たちが積もっていく
それは、心の、大きな空洞を埋めることなく
外に積もる

臆病者には、逃げ腰の姿勢がいちばん似合いだよ
罪悪感を抱え込んで
それは、この砦に残った最後のぬくもりなんだ




いくら煙を吸っても吸い足りなくて
アルコールにはすぐ潰された
酔いが回ってきた

(なあ、お前のがらんどうは埋まったか?
 俺のはちゃんと埋まったよ
 楽しくて仕方なかった
 この時間がいつまでもいつまでも続けばいいと
 本気で思ってたんだ

 でも酔っぱらってしまって)



そろそろ、この満たされない空洞そのものを
疑ってみたほうがいいのかもしれないなあ
そこにはふいごで風を送り込まれたように、ただ
乾ききった皮肉めいた炎が充満するばかりである


コンビニのチカチカした明かりが近づいてきた
夜光らしかった
店員が店前のゴミを拾っていた
ゴミを散らかした人がいたんだろう
店の中では
古い女性シンガーが甘ったるい声で
女の子のこえをうたっていた
明るい人気のないコンビニが
ライブハウスみたいだった
それがどうしようもなく、効いてしまった

忘れても
忘れても足りない
忘れようとして実は思い出している
こんな記憶まで引っ張り出してきて
僕には言葉すらなくなってしまうというのか


たるん


たるん


曇った夜空をホバリングする煙

メッセージ


言葉は
物語にも詩にもなれずに積もっていく
口に出して云うには、とうてい
もっと及びもしない
臆病な言葉たちだ





自由詩 十一月 Copyright チグトセ 2007-11-06 11:07:51
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