signal
さくらほ

交差点 黄色信号 傘持たぬ二人に細い秋雨の降る

自己判断でゆけと告げている点滅の赤その向こう側

助手席で君の視線の動きにさえ見惚れてしまう我は盲目

怖いと言いながら本当は何も恐れていないかもしれない

Uターン禁止と命じ送り出す 若き君に栄光のさちあれ

シグナルは本当は自分の中にある 見えているのに見えぬふりする


Alone

土曜日の天気を気にする君の声聞こえないふり聞こえなくなる

葉っぱ物が安くなったと嬉しそう 独り暮らしはもう慣れたんだね

愛しくてそれが素直に言えぬからただ抱きしめる君の背中ぎゅっ

翼ってどうも本当にあるらしい 君の背中から羽ばたきの音

目じりの皺が優しさの日だまり 私だけにと願ってはならぬ

赤い糸も銀のリングも要らぬからもう少しだけ季節が欲しい

明け方の冷たい雨が残る街 傘の波に飲み込まれていく




many times

冬のバイクはキツイと凍えてる君抱きしめて解凍する朝

聞き取れぬ声を「何?」と頬寄せ来る それがいいから声は張らない

小首曲げて長身の君が上目遣い その目も頬も全て欲しい

甘えんぼ幼き顔で「いいの?」って そう問われたら答えは一つ

あーどうせ俺はエロだという君の笑顔の犬歯に愛しさが増し

暗がりで重ねしものを胸に秘め生まれ変わる朝は女

青抱いて線路の向こうに咲いている君の好きなつゆ草に冬

転がって落ちても我は割れはせぬ かわいげのない女でごめん

朽ちてゆく我が身 育ちゆく君 交点すぎた直線交差

胸のうち決して君には告げないけれど いつかどこかでtanka for you

目を細め炬燵で丸くなる君を子猫に仕立て頬ずりをする

知らぬ間に私の癖が移ってる それもやがて消えてゆくのだ

その腕は誰かを守るためにある 大丈夫私は強く出来ている

肉体に響く寂しさふるふると 深まる夜に音も無く雨


遮光のカーテンの向こうに朝が来る あと何度君を思うのだろう


短歌 signal Copyright さくらほ 2007-10-31 23:09:26
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君の歌