怪奇月食
あおば

素麺を啜りながら東の空を見た
月消えて
すみそにあんかけうまかろう
そらに女のささやきが
ゴアゴアした風にも油断ができた

すみそにあんかけうまかろう
提灯で電気花火に火をつけた
撥撥跳ねまわる白熱の直線
草の根元の地面は地獄
火事になんかなるものか
ふふんとわらう、ふふんだ

夜が更けて月消えて
暗い夜道を音もなく
少女のなりしてやって来た
幼児を歩かせやって来る
目を合わせたら危ないぞ
奇怪な場所に連れ込まれ
幼児にされて歩かされ
すみそにあんかけ食われるぞ

草臥れて眠いのに
ささ さささ   ささ さささ
うでの付け根を引っ張られ
ささささ ささささ
幼児は宙を飛んでいる
ほほほほ  ほほほほ
黒い少女は声もなく
力強く微笑んで
歩みを速め挑み来る
ささささ ささささ
腕の付け根はちぎれそう

目をそらし
知らぬふりが成功し
気づかれぬままにすれ違う
あとは足を速めて逃げるだけ
さっさ さっさ ほーいほい  ほーいほい

おじちゃん! 元気な声が木霊して
にこにこ笑う姪のかお
三十路を過ぎてもあどけない
今 寄ってきたとこなんだ
この児たち
草臥れたから帰ります






過去作
2000/07/16?



自由詩 怪奇月食 Copyright あおば 2007-09-05 01:50:30
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