キリコ
影山影司

「昔々、ある所に女がいた。
 女は罪人だった。
 女は村を追われ、村人に石を投げつけられていた。
 そこをたまたま通り掛かったイエスキリスト。

 『この中で罪を犯した事の無い者だけが石を投げなさい』

 そしてイエスは

 嬉々として石を投げたという。」


 これからの話は、それと全く関係ない女の話。


 ある所に女がいた。
 女はキリコというバカな女子高生。
 キリコの頭の中には砂糖の城とフルーツポンチの池があって
 キリコはバカだから「私、天国へ行きたいの」なんて真顔で言ってしまう。
 キリコはバカだったから、毎日生きる事に怯え
 キリコはバカだったから、天国へ逝く事を望んだ。
 キリコはバカだからジャンプのキャラクター人気投票じゃ必ず『ナッパ』に投票する。
 キリコはバカだから学校へ行かなくなり
 キリコはバカだから街を当て所無くふらつく。

 キリコはバカだから僅かな金で男達に抱かれて
 キリコはバカだから、それで幸せになってしまう。

 キリコは優しいから、逝き果てる男を見て幸せになってしまう。
 下らない男達はキリコにここでは言えない様な事や
 「このドMがッ!!」と罵倒したりして
 それでもやっぱりキリコは幸せだった。


 キリコはバカだったからほどなくして事故で死んでしまった。
 首にケーブルを巻いてガソリンの海に溺れてさらに火を点けられて死んでしまった。
 キリコはバカだったから、その報告書もバカバカしいものになってしまった。


 ねぇ、聖母マリアは処女懐妊したんだってさ。
 ねぇ、キリコはすっかり穢れてしまいましたよ。
 ねぇ、キリコは天国へ逝けるんですか。
 キリコは天国へ逝けるんですか。
 キリコは天国へ逝けるんですか。
 天国へ逝けるんですか。
 あなたは信じますか。
 キリコが天国へ行ったと、信じますか。
 キリコはどうしようもなくバカだったけど
 毎日生きる事に怯えていたけど
 それでも一生懸命生きていたんです。
 キリコは天国へ逝けたんですか。
 ねぇ、天国を信じますか。
 キリコが天国へ逝けなかったら
 僕はどうやって生きていけば良いんですか。
 


未詩・独白 キリコ Copyright 影山影司 2007-09-03 23:31:11
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