フランクリン・シンドローム
たりぽん(大理 奔)

雨に吸い取られるように
街から見上げると
あしもとの同心円は
忘れてしまう
私ではないあちこちを中心に
広がる波紋の重なりで
まちは夏の終わりに濡れて
遠い港の潮臭いしぶきまで
思い起こさせる

手に触れなければと思う
ぬくもりも確かめて
匂いもかいで
ようやく信じられる
濡れている風景

一瞬、雲が切れたとき
木星が見えたね
(見えたようだね)
あれはどんな匂いだろう
あれはどんな手触りだろう
そして、ぬくもりも
確かめなければ

その夜
私は街灯のように孤独で
電線のように誰かとつながって
信号だけをやり取りして
明滅する夏の終わりに
荒れ狂う自由にあこがれて
稲妻の狂気にあこがれて

引き抜いた接地線アース
高らかに
あの夜の積乱雲にとどけと
投げつける

  (同心円は 忘れて)




自由詩 フランクリン・シンドローム Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-08-30 19:45:55
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
シンドローム