風船
ロカニクス

風船が
割れなくなって

空が
割れて

閃光星の隣まで
来てしまった
息の代わりに
靄を吸う

風船の中は
温かい未来で
階段も天井も
白く

湿ったものは
どこにも無い

心が終わる夢を見た

たくさんの夕焼けを
茶色に塗って

後のことは
後で考えたらいいよね

胸の痛みは
くしゃくしゃにして
色と一緒に
置いてきた

今日の夜が
明日の朝になるほど
高い場所に
舞い降りた

二人は
羽根になれず

風船に
穴を開けたがっている

ここに
名前をつけよう
できるだけ
軽い名前

二人は
塵になろうとせず

蒼穹を
散りばめている

悲しみ
悲しいのは
燃えているからで

その燃えているものが
何か分からなくて
悲しい

ここは
無量大数で
涅槃寂静で
風船だけが
じっとしている

二人は
尽きた

手に手を
取り合って
尽きた

ここは
二人

仲良く
人間になったときも
ならなかったときも
二人だった

もし本当は
二人じゃなくて
風船だったら

どうしよう

でも
もういい

美味しいものは全部食べた
全部飲んだ

綺麗なものは全部見た
全部聞いた

全てってなんだろう

全てって
優しいのかな
怖いのかな

こことは違うのかな

涙は
甘い

甘いは
優しいも怖いも違いも無いから
迷子が
すがりつく

甘いは
しょっぱい


どうして
感覚がある

どうして
終わりは
終わらない

変わるものも
変わらないものも
熱だった

終わりは
熱じゃなかった

今分かった

二人は

温度になりたかった

二人は
気付いたら
一人だった

くっつきもせず
離れもせず

上手に別れて
上手に
一人になった

後には
風船の外が
残る

これからは

ありがとうだけで
生きてゆきます




自由詩 風船 Copyright ロカニクス 2007-07-28 16:01:50
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