煙草

鉛のようなキス をする
恋人の背中に
手をまわすと
その かいがら骨は
堅く いびつで
かなしくもいさましい

ゆっくりと
おもくあつい寝息に満たされてゆく
部屋で
布団にねそべりながら
煙草えんそうに火をつけて吐きだす
しょさ を する


傾ける
えんえんともゆるあかいひが
たわやかに息をする
かいがら骨を
焦がしてしまわぬように
煙よりもあいまいに過ぎてゆくものが
とうめいな時を
隠してしまわぬように
なんども水差しへ
傾ける


さよならのためのキス を
きみも
持っているんだろうか


カーテンの波がおおきく揺れ
さらさらと落ちてゆく灰いろの空が
明けてゆく音が
きこえる

濡れたくちびるの端をなめると
すこし だけ
辛かった


自由詩 煙草 Copyright  2004-05-21 01:15:18
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