夜を泳ぐ
朽木 裕

飛び込めないのは25メートル先の地上
あたし 空なら飛べるわ

耳鳴りがやまない
自分が嫌で吐き気のする夜

夜の闇に溶けたら君のもとまで行けますか?

鉄柵のうえで足を投げ出して
見えもしない星を見上げて、祈る

あたし あのひとが すき

茫漠と夜が滲んで闇の一部に成れた気がした
月は冷たく夜を引っ掻いて
風はびゅうびゅう吹きすさぶ
足はぶらぶら宙を舞う

位置について、飛び込み、用意…なんてね

夜が真っ黒い水をたたえて
静かに静かに波紋をつくる
きぃん
凍えるような神経の音

セーラー服ひるがえる
手を伸ばせば届きそうなソラへ

飛び込めないのは25メートル先の地上
あたし 空なら飛べるわ


自由詩 夜を泳ぐ Copyright 朽木 裕 2007-07-12 23:54:21
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