あかん
アマル・シャタカ

こんな世界に眠れる夜なんかあらへん
目ぇ覚めんのか、覚めてへんのか、それとも冷めたんか
そんなこともわからへん
お前がおらんとあかんのや


山しかないようなとこやった
山の向こうに何あるのんか、皆でよう話したわ
マジンガーZが埋まってるいうやつがおって
いいや、世界の端っこやいうのもおって
山には宝がある言う、ええかげんな大人もおった
ときたま上流から洗濯機が流れてくるねん
たいがいは材木やったり、家畜やったり、テレビやったり
都会から来た人も流れとったわ
田舎の河や言うたって、別に星なんか流れへん
流れんのは見捨てられた欲望だけや
ついばんだ魚は夏にはまた、釣り人の欲望にされんねん
せやさかいに
お前がおらんとあかんねん
そうやないと
河にも星は流れてくれへん


いっそな、山の向こうが世界の端やったらよかってん
そのほうがメルヘンやろ
世界の端から落っこちるほうが、ビルから落ちるよりすくわれる
大人になって知ってしもたら、どんだけつまらん
山の向こうも権利権利で
欲望が手薬煉ひいて待っとっただけやわな
その上を鹿が跳ねていくいうたら、ええとこみたいに聞こえるけども
山から下りたら車に刎ねられて
お前のおらん俺なんか
そんな血ぃ流して倒れた詩歌や


新世界いうとこがあって
ごっつい匂いがしよるねん
ある意味、新世界やけどな
いろんな人がおったわ
背筋伸ばして、腕突き出して
座って捨てられた雑誌読む初老のホームレスとかな
学校でも人の話も聞かれへん子供増えたことおもたら
やっぱり三つ子の魂百までなんやろ
せやから
お前も俺がおらんと生きてかれへん


昔な、俺の町の魚屋の魚は
新聞に包まれとってん
なかなか博学な魚やろ
もう、そんな魚おらへんなったけどな
ネギかってそうや、新聞が大好きやったわ
そこに書かれとることが真実やっても真実やのうても
とにかく慕われとったわ、いろんな意味で
俺かってそうや
お前を包みたいし、お前に慕われたいねん


涙は溢れとってもな
この世界には星は溢れへん
言葉かってそや
見てみ
言刃ばっかりやろ
どこそこで誰が殺された言うてたり
俺も知らん間に言うてしもてる
そやから寝られへん
いや、嘘や
お前がおらんから眠られへんのや
お前はよう眠れとんのか?


筆を折るいう人がおる
作品を作るのに骨を折る人もおる
箸にも棒にもならんいうけど、俺の筆はそんなもんやろ
飯が食えるわけでもあらへんからな
せやから、俺は自分の筆は折らへん
折っても折らんでもたいした違いはあらへんねさかい
せやけどな、お前にはおってもらわなあかんねん
お前にも俺がおるから
おらなあかん


二人やなかったら人間て言わへん
俺とお前でなかったら
あかんのや



自由詩 あかん Copyright アマル・シャタカ 2007-07-12 13:13:15
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