昼下がりが発狂した
カンチェルスキス



 




 広さを言い表せない頭上の空が
 歩いてるうちに狭くなる
 登場する人物の頭は抜け落ちた
 頭で隠していたものは
 隠す必要がなかったものだ
 電柱のチラシ一戸建ての中古住宅の値段
 ショッピングセンターの天井の角に
 停止した色のない風船が破裂する
 パトカーのサイレンが鳴りやんだ
 Uターンの車に軽トラが突っ込んだ
 市民グランドは感染した
 繁殖した水溜りが
 緑のネットの網目に黄身を失った白身のようにからみついた
 底の見えないドブ川を埋め尽くす人の頭と頭の隙間に
 青白のボラが何匹も詰まった
 抜け落ちた頭が
 ここに集まっていた
 弓なりに曲がった橋の真ん中まできて
 昼下がりが発狂した






 


 


自由詩 昼下がりが発狂した Copyright カンチェルスキス 2004-05-18 21:03:44
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