アメリカン・ブレックファースト
大覚アキラ
ダイニングテーブルのうえには
いま
まさに呪いのかたちがある
パン
なみなみと注がれたぶどうジュース
半熟の茹で卵
干からびたベーコン
銀のナイフとフォーク
それらすべてが
不自然なバランスで配置され
それによって意味を与えられている
笛吹きケトルのけたたましい叫び
だらしなく漂ってくるコーヒーの匂い
隣室のドアの隙間からは
赤ん坊が火が点いたように泣く声が
いつまでたっても
誰も
テーブルには着かない
ダイニングテーブルのうえには
呪いのかたちだけが
冷え切って
蝿がたかりはじめていて
誰もいない