最果て
水在らあらあ
焚き火をじっと見ていた
三日月が荒れた海の上に濡れて
俺達は二十人ぐらいで
世界の果てで
最後の夜で
世界の果てで
焚き火を囲んで
女たちはずっと歌って
男たちは拍子をとって
旅の途中で芽生えたいくつかの恋が
火の回りで踊り始めて
歌は続いて
ずっと続いて
俺の右にはヴィトリオがいて
俺の左にはアレックスとラファエルがいて
焚き火をじっと見ている
ヴィトリオとアレックス
ある朝先に行っちまった俺を追いかけて追いかけて
二十日間 今日この世界の果てで再会するまで
道行く巡礼者みんなに尋ねて歩いて
レジェンダ デ ヨージを作り上げた
皆が俺の名前を知っていて
皆が俺を探し始めて
でも捕まらなくて
アレックスに初めてであったのは巡礼宿のシャワールームだから
俺の背中の翼を知っていて
あいつは歩いてないんだ 空飛んでんだってことになった
誰も追いつけない 空を飛ぶ日本人の伝説
ヴィトリオ 実際は俺もおまえを探していたんだぜ
それで走っていたんだ
おまえの手作りの杖の先に揺れる
鈴の音が忘れられなくて
カラブリアの浅黒い吸血鬼のようなおまえの目つきが忘れられなくて
おまえと飲んだアブサンが忘れられなくて
アレックス 隣のシャワーからおまえが裸の俺の肩を叩いて
パンツ取ってくれって それが出会いだった
その夜おまえがその天才的な笑顔で人を集めて
宿のキッチンで皆で料理して食べて
おまえとヴィトリオとラファエルと俺とで
中庭の壁乗り越えて朝まで飲んだ
支払いはついて来たアメリカ人の若造に任せて
体を倒して
闇に隠れて
ポケットからナイフを取り出して
暗闇で刃を確かめて
腕を切る
ヴィトリオ
にぎってみな
アレックス
ラファ
血を
もらってくれ
ヨージサン、アリガトウ
De Nada
ヨージサン、アリガトウ
De Nada
ヨージサン、
De Nada…
アリシアが立ち上がって炎の向こう側から俺を呼ぶ
マリオ! このイタリアのじゃじゃ馬は
出会ってから今日まで俺をマリオと呼び続けている
奔放な魂
抱き合って踊りだす
頬が 熱く 濡れて
三日月は荒れた海の上にとどまって
見上げるとそこは宇宙で
ずっと続く歌声に任せて
体が宙に浮かんで
心は
世界を愛して