創書日和「窓」 そらうみ
山中 烏流

指先だけで、そっと
窓を開いてみる
隔てていた向こう側には
空の海があり
 
紙飛行機を飛ばす
誰宛てとかではなく
紙飛行機を飛ばす
そこに、意味なんてない
 
 
ここは海だろ、と
言わんばかりに
目の前を
鯨が悠々と泳いでいく
 
確かに似てるけど
違うよ、と囁いてあげた
そうしたら
羽を生やして
飛んでいってしまった
 
 
 (水平線すら
 (見当たらない
 
 (一面の、
 
 
投げ過ぎて
最後になった紙飛行機に
ピンク色の油性ペンで
小さく
ハートを描いた
 
空の涙や、汗で
消えてしまわないように
わざわざ
油性ペンで描いた
 
 
鯨は
真っ白にお化粧をして
 
空に、浮かんでいる
 
 
何処へともなく
最後の紙飛行機を
ひゅん、と飛ばして
窓を閉める
 
潮の香りが
ふわりと、鼻先を
掠めて
 
 
 
ああ、やっぱり
 
海だったのかも
しれない。


自由詩 創書日和「窓」 そらうみ Copyright 山中 烏流 2007-06-22 02:13:14
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