Vagina
shu

もうなんだかざわざわして落ち着かない
歪んだ時間の森が襲ってくる
変てこなトゲトゲのある触手のような蔦が
足元から競りあがって絡みつく
おっぱいのような房の垂れた樹が
白い樹液を吐き出している
地面から失われた顔が淋しげに浮き出てくる
ちいさい息子が泣きべそをかきながら包丁を持って
靄のかかる深い森の奥に駆けていく

おとうさーん
おかあさーん
どこにいるの

大好きなおまえが妖精みたいなおまえが
素肌の透けた薄い衣を羽織って
淫靡に笑ってアタマを擦り付けてくる
オレはなんだかはあはあ息苦しくて切なくて
逃げ出したくなる衝動に歯を食いしばり
座ってじっとしている

くるくるまわろーよー
まわろーよー

媚びて笑うクチビルから蜜のような液体が垂れる
そうして小鳥のように首を傾げて言う

あんた、しっぽない?

ふいに真っ赤な目になって彼女のアタマが爆発する
黄色い液体が撒き散らされ
アタマからずぶ濡れのべとべとになって
オレの顔も半分溶けていく
それでも穴という穴から
虫のようにわらわらと這い出し
拡散する不毛な念を一匹ずつ抹殺する
狂ったように滅茶苦茶に喚きながら
野獣のように歯を剥き出し噛み潰して

           
               疲れ果て

気がつけば森はなくなり
がらんとした誰もいない広場に独り
泣き出しそうな赤ん坊の魂を抱えている

おぎゃあおぎゃあ
おきゃあおきゃあ

オレの汚い泣き声だけが
血まみれの襞に包まれた壁にこだまする
オレは 消えたいのだ
ここから 消えたいのだ
もう
しっぽが
ないってんだよぅ


出口は 

どこだ







自由詩 Vagina Copyright shu 2007-06-20 14:25:11
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