ジグソーパズル
なかがわひろか

真っ白なジグソーパズルを完成させた
僕は部屋一面に広がった白い景色を見て
なんだか味気無くなったので
そこに自画像を描き始めた

頭を描いて
顔を描いて
その中に目を描いて
鼻を描いて
口を描いたあたりで
すっかり飽きてしまった

描くのが面倒くさくなったので
僕はパズルの中に入り込むことにした
そうすればすぐに終わる
僕は簡単にパズルの中に入り込んだ

お母さんが帰ってきた
僕の部屋のドアを開けると
そこには僕が描かれた巨大なジグソーバズルが
一面に敷かれていた
お母さんはとても面倒くさそうにため息をついて
パズルをバラバラにした

僕は
頭や顔や
体や手や足や
内臓や骨まで
全部をバラバラにされた

パズルを片付け終わった後
部屋は僕の血で真っ赤になった
お母さんはもう一度ため息をついて
雑巾で部屋中の血を拭き取った
雑巾を絞ると大量の僕の血がバケツに飛び散って
またバケツをきれいにしなければならないと
お母さんは何度目かのため息をついた

僕の描かれたパズルは箱に入れられて
そのまま押入れの中に放り込まれた
妹がもう少し大きくなったら
このパズルを見つけてまた作るかもしれないけれど
きっとまたお母さんがため息をつくから
僕はずっとこのままなんだろう
そんなことを箱の内蓋を見つめながら
僕は思っていた

(「ジグソーパズル」)



自由詩 ジグソーパズル Copyright なかがわひろか 2007-06-20 03:33:15
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