蜘蛛の内部にて
もりおかだいち

彼の内部には常に殺戮の音楽と黙考が混在していて、彼に付随する糸という概念はその両者の結合のための不可解な生命の観念であり、同時にそれまでの彼の存命の象徴であり、僕は彼の糸そのものとして、他者に与える恐怖の生成を充たした流動的かつ内的な独裁の物質でもあったが、その僕自身にも彼の有する音楽とか黙考といったものには直接指揮が及ばず、やがて糸それ自体は不毛な殺戮とその思想にのみ同期する不具な神経へと成り下がるのである。そして僕はこれより彼の新たな存命の象徴とされる魂と呼称される戦慄の部位の存在に常に緊張していなければならないのである。

その際いわゆる
彼の魂とは呼吸する精神の疾患で、彼の外部に充たされた光彩に命を燃やしながら敵対者の宿す神々へ愛を呼びかける極めて前衛的な生命との対峙であり、他者より与えられる恐怖をいつ何時も甘受してそれを一つの祈りへと変成する博愛の個性なのであり、同時に彼の内部に響く音楽の純粋な旋律、透き通った思考の明快さそのもののことを言う



自由詩 蜘蛛の内部にて Copyright もりおかだいち 2007-06-13 07:41:10
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