アカネ
チグトセ

今日は夕焼け空だった
だけど今日は相変わらずどこへも入り込めなかったので
迷っているうちに一日が閉じた
そして空欄の日記が増える
今日も何もない一日だった

なあ、嘲うなよ電気
そりゃ確かに滑稽さ
でもそんな引き笑いで
ああそうか、もう悟ってるんだな
アンタは偉いよ

風は生ぬるくてときどき強くて
僕は体を揉まれて少しよろけた
何も知らない世界は今とても穏やかで
とくに何も知らされない僕もとても穏やかで
穏やかで

ああ日常は無事春の上に着陸したようだ
でも春がどこだか未だにわからない
しばらくは冬が来ないということだろうか
もうすぐ夏が来るということだろうか
ああだけど、ひとつだけはっきりしていることは
エアコンのコンセントを
もうしばらく抜きっぱなしにしていてもいいのである
電気代が助かるなあ
なあ、電気

今日は夕焼け空だった
真朱に染まった世界でもう
奥行きが感じられないね
耳を澄ませば聴覚の深くに届く
貨物列車の走る音、長い残響、遠い汐騒、秒針
膝の関節が短い音を立てて鳴った
電気、俺たちに質量があるってのは素晴らしいことなんだぜ
電気、アンタよりちゃんとはっきりしてるってことなんだよ
わかったか、電気

今日は夕焼け空だった
夕焼け空だった
何もない一日だった
でも惜しげもない
見事な夕焼け空だった


自由詩 アカネ Copyright チグトセ 2007-05-21 02:05:51
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