太陽を待ってる
快晴
モデル崩れで夢遊病持ちのレイナは
月も眠りについた真夏の夜に
四角い空に星を張り付けて回っている
いつか自分も星になれると信じていたけれど
最近は慎ましい結婚に憧れたりもする
プロボクサーを目指すコージは
赤いポリエステルのトレーニングウェアを着て
まだ昼間の熱を残すアスファルトの上を走る
夜空に瞬く星をじっと睨み付けながら
大歓声の中にいる自分を夢見ている
小さな銀行に勤める新人OLのマリナは
どこか沈んだ気分で小石を蹴飛ばしながら家路を辿る
その横を颯爽と走り抜けていく赤い服の男が羨ましく思えた
まだ学生の年下の彼氏は今夜も飲み会らしく
電話をかけてもすぐに留守電に切り替わってしまう
この道20年のタクシー運転手のキヨシは
今日もノルマを達成出来ず途方に暮れて
路肩に車を寄せてお気に入りのセブンスターを深く吸い込む
どこかから転がってきた小石がタイヤをかすめて
胸のポケットから離れて暮らす息子の写真をそっと取り出す
今日もまた不採用通知を食らったリョウは
深夜のファミレスで何度もコーヒーをお代わりしながら
窓の外を見ると頭部の薄くなりかけた男がタバコをもみ消している
いい加減にそろそろ本気で別れを切り出そうとして
レイナの携帯番号を呼び出してはまた閉じる