ファミリーレストラン
チグトセ

ささやかなごく、日曜日
ファミリーレストランでアルバイトをしていたら
ひと組のささやかなカップルが入ってきた、
というどうでもいい話
は、詩にはならないだろうか

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
「2名で〜す」
「お煙草のほうはお吸いになられますか?」
「えっとねえ、あたしってねえ、基本的には煙草吸う人なんだけど〜、明日はホン彼とのデートがあるわけ〜。だからそのためにい、今から我慢しとかなきゃいけない〜、ってゆうかあ」
「かしこまりました。それで、お席のほうは禁煙席と喫煙席がございますけれども、どちらに致しましょう?」
「てゆうかあ、我慢はからだにヨクないともゆうしい〜、タバコやめたら太るってゆう話も聞くからあ〜」
「承知致しました。それで、お席のほうはどちらに?」
「んん〜、てゆうかぶっちゃけ〜、どっちがいいとかあたしわかんないしい〜、ねえマサくん、どっちがいいと思う?」
「ボクはミサちゃんの意見に従うよ!」
「はい、喫煙席ご案内しま〜す」

ささやかなごく日曜日、ファミリーレストランは、連休初日ということもあり、吐き気がするほど混んでいた
こういうタイミングでチーフは家族で海外旅行である
優雅なものだ
ていうか一生海外に住めばいい

このあとは1分47秒後にできあがるグラタンを38卓に持っていき、それから2卓と16卓を一気に片付ける。あと洗浄器からあがったコーヒーカップの移動、ストローの補充。僕は心のなかで予定を復唱すると、小走りに新規のテーブルに駆けつけた

「ご注文のほうはお決まりでしょうか」
「あたしってねえ〜、基本的には好き嫌いのない人なんだけど〜、辛いものとかもねえ〜最近食べられるようになったしい〜」
「かしこまりました。それで、ご注文のほうはどう致しましょう」
「あ〜でもねえ、いまだにい〜、エビってあたし無理なのお〜。生きてるときの姿とか想像したら気持ち悪くってマジありえなくってえ」
「存じております。それで、ご注文のほうは」
「あ、ちょっと待ってて〜、着信〜。……あ、もしもしともこ〜?」

仕方がないので僕は向かいの男に話しかけた

「あの、ご注文のほうは……」
「ミサちゃんいま電話ちゅうだから!ちょっと待っててって言ってるでしょう!?」
「申し訳ございませんでした」


自由詩 ファミリーレストラン Copyright チグトセ 2007-04-21 18:25:23
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