スラッシュトレード
及川三貴

空につるされた
大きなはねがまわる
からおとたてる
かいてんが どこか
はげ落ちたがいへきのさびしさ
人の形をしたうすいかげが
つめの先にあつまる
ことばを探している
おびえてかくれた
駅のかいだんの手すりに
むすび付けられた布は
ちいさく温もりを
うばいながら
くらい夜の色に
そまってゆく
あなたたちは
とてもゆっくりと動いて
気づかれないように
ほころんでしまった傷を
こうかんして
同じような形を
夕暮れのなかに
そっと うめてゆく
そんなのが
季節をうごかして
街をうごかして
でんしゃをうごかして
わたしをうごかしている
しょうたいで けれど
みんなだんだんと
時計がくるうように
いつか動けなくなって
それでも また
傷をこうかんして
どんどんとうまれて
白いかみを もっと
白くしてゆく
いたくない という
声をきくために
つめの先にあつまった
だれかのねがいで
わたしはあなたをあいしていた
と文字をうつ
よるのからおと
ただまわる



自由詩 スラッシュトレード Copyright 及川三貴 2007-03-27 21:45:25
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