母性愛
深散

生と死の狭間で、人は一瞬光を放ち

生と死の狭間で、人は揺らめいて燃え

生と死の狭間で、人は優しげに笑み

生と死の狭間で、人はささやかに呼吸し

生と死の狭間で、人は一瞬醜く澱み

生と死の狭間で、人は蠢いて吼え

生と死の狭間で、人は怨めしげに哂い

生と死の狭間で、人は浅ましくもがく

赤子の歪んだクライ
死んでく眸の威容なクリア
赤子の肌の歪な柔さ

ああ、ああ、

気持ちが悪い

こんなものが

腹に、腹に、胎に、

詰まっていたのだ

みっしりと

肺を押し潰して

こんなものを詰まらせて

ものを喰っていたのだ

ごくん、ごくんと

管のなかへ

その先にある

血管の穴

噴出す動脈血

浴びる胎児

ああ、ああ、

なんてなんて可愛い

あたしの子

あたしの子

あたしの

こんなものを
胎に詰めて

こんなものを腹に
詰めてしまいたい

こんなものを腹に詰めてしまいたい。

そういう意志を持つ

慈母の腕。


自由詩 母性愛 Copyright 深散 2007-03-22 06:03:50
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