デザイン変更
あおば

急いで下さい
家のとなりが火事ですから
すぐ来て下さい
奥さん、落ち付いて
落ち付いてなんで居られません
早く来て下さい
切れちゃった
こういうの困るんですよね
望楼からは何も見えない
とりあえず出動準備だ
サイレンの音も高らかに
飛び出す我らの毎日は
危険との遭遇の繰り返し
ダメだ、書きなおし
静かに落ち付いて書くのだ

春眠暁を覚えず
夜来風雨の声
花落ちること知る多少

ダメ真似するな!

太陽は真昼のうちに有り
心の闇を照らすまで
いつまでも梢で待つ
衝心の出来事に切片を閉ざし
感覚の倦怠をポケットに入れて
急いで訴訟人の顔に張り付ける
現在建築は常に韜晦の企みを持ち
非情のほころびもそのままにして
灰色の帆船は、俺を残して沈没した

デザインの倒錯はいつものことだ
言葉の真似はそのくらいにして
色彩の解凍をはじめよう
15分後にインジゴの中に
パールホワイトを混ぜて
電気炉で燒結する
叩いて粉にして水で溶く
空色の訴訟人は空腹の中で
閃きを得て衝天した
そのぐらいの効果の有る
壁の色を待合室に塗り
今日の仕事とした
デザイン変更に伴う
格子欠陥の確率と
遷移時間の短縮を
常に忘れず繊細に
それが、常に先頭を切るものの
心構えと壁に描きたいが
デッサンが甘いので目立たない
それより
昼の太陽は最中に有りで
瞋恚の焔を吹き付ける
俺は恐れて気の眼の中で
灯台の倒れるのを今日も
目撃する
繰り返しのデザインは
なにか、優雅で心安らぐ
永劫回帰の願いを示す




作2000年3月9日


自由詩 デザイン変更 Copyright あおば 2007-01-26 01:51:16
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