きまぐれ
竹節一二三

きみはきまぐれ
洗顔料をはぶらしに塗りつけて
靴を磨いている
それはちがうと虫はささやき
猫はその虫をくわえて去った
葉の落ちた柿の木がゆれる
ほりかえされた桑が叫ぶ

ハンドクリームを爪に塗って
無意味だねとわらう
洋服を縫っていた針で硝子に絵をかく
めがねはいつもさかさまで
裏返していれたCDは音を出さない
レコードと違うんだから
雨の匂いはアスファルトに溶けた

きみはなんてきまぐれ
はさみをピンセットのように使おうとして
紙が切れたとないている
あたりまえなのに
今日も猫はきみになついて
わたしには爪を立てる
茶色の毛をくつしたになすりつけ
なうなう鳴いて排水溝にもぐる

わたしもきまぐれに
薬缶を火にかけ
パソコンを立ち上げる
気づくとからだき
火事がこわくておののく
川が近いからいいじゃない
きみはわたしの頭をなで
頬を力いっぱい抓った


自由詩 きまぐれ Copyright 竹節一二三 2004-04-05 23:16:21
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