繭/由比良 倖
 
以下の方がこの文書を「良い」と認めました。
- リつ 
- 洗貝新 

廃校の廊下にはバッハが流れ 
      青い記憶が保存されていた
いまでは
古民家となって田舎を訪れる旧家の 
屋根裏の階段を登り終えれば
  大きな梁と
ちぎれた蜘蛛の巣がぶら下がる
  それは蚕の舞台装置
           真綿のように

終わりの三脚(行)がいいですね。
~青い冬の舞台装置が壊れていく~なんてかっこいい。
「繭」
名作劇場を懐かしむように、物語がわたしを誘いました。


- atsuchan69 
 
作者より:
>洗貝新さん

ありがとうございます。
僕はよく放課後の音楽室からチェロの音が漏れ聞こえてくる空想をします。
暗くて幻想的な空想に似合うのは、ベートーヴェンでも、もちろんショパンでもなく、
バッハだと思います。バッハの無伴奏チェロソナタが好きです。
空想の中では、何処にでも行けますね。何処までも深く。
(と言いつつ、今はソニー・ロリンズの70年近くも前の録音を聴いているのですが。
 ロリンズがまだ元気に生きているのが驚きです。
 100歳まで生きると思えば、人生ってまだまだ始まったばかりの気がします。
 ……完全に蛇足なんですが。)

この詩は、書きたい感情が先走って、纏まらない印象が強いのですが、
言い換えれば、散漫でありながらも、感情の流れはぶれていないかもしれません。
格好いい、心にすっと刺さるようなフレーズって、何処から出てくるのでしょうね?

言葉は意のままにはなりません。言葉に身を預けたとき、意図しなかった一節が出てくる瞬間があります。
そういう瞬間はこの頃滅多にないんですが(もっとあって欲しいです)。
言葉自身の命を感じたり、心の深くを期せずして言葉で掬い出せるような時間がとても好きなので、
その感覚を忘れないために、言葉に縋り続け、書き続けている気がします。

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