すべてのおすすめ
あれは空だろうか
それとも海だろうか
わたしが欲しかったのは
あの青だったのだ
体中の骨を関節を筋肉を
すべてを伸ばし
掴もうとす ....
米を研ぐ
それは繰り返される日々の儀式
手のひらにあたる米粒はかたく
米どうしがぶつかりあい
じゃっじゃと音をたてあう
このかたいひと粒ひと粒 ....
なんと醜いものだろう
ただの肉塊であったなら
赦されたものを
このなかには
潜み蠢くものがある
....
風の入らぬ蒸し風呂部屋で
汗を拭きつつもろこし齧る
年に一度の逢瀬より
うだる暑さに流されて
来年こそはエアコンに
冷たくされたい女の ....
湿った手のぬくもりや
かかを探して泣きだす姿
そんな幼子の始まりが
泣きたくなるほどいとしくて
この腕に抱きしめる
おんなが笑う
おんながしゃべる
おんなが怒り
おんなが泣いた
おんなの寝顔に安堵する
....
それは
人の魂を包むものでした
紫紺の夜空にぽっかりと
白く人魂のごとく
浮かぶのです
隠されているのでした
6枚の 花び ....
めざしのような
ししゃものおなか眺めては
惚れたと思ったあの気持ち
いったいどこへやったのか
箸でみそ汁つついて探す
夕餉の残 ....
小さなあなたに逢いたくて
路線バスを乗り継いだ
海を追って風を切り
バスは走るどこまでも
裸足のすがた追い ....
夕飯に缶詰をあける
100均の鯖缶だ
閉め切った部屋に
さかなの匂いが充満する
ろうそくの灯りの中
....
あおい空の向こう側
彼岸のかなたに届くまで
大きく大きく手をふって
元気です、と
あなたにすべて ....
冬がひきこもっていた
クローゼットを開け放ち
ハンガーにヒヤシンス
春のドレスが花ひらくを待つ
頼りなげな薄手 ....
道ばたの石ころでした
春になるとかたらわに
青い花が咲きました
今も道ばたの石ころです
冷たく固く凍っています
....
肩を叩かれた
振り返ってひとりきり
だれもが傘をさし
早足で家路にいそぐ
見上げれば顔に降りかかる雨
....
賽の目に
切りながら
豆腐一丁ぶんの
愛がほしいと
てのひらで
哀しみが
揺れる夜
....
うつくしいと
つぶやく声が
聞けるのであれば
この身を
一輪の花に変えよう
うつくしいと
やさしいまで ....
ひいらぎの葉蔭にて
にたりと嗤う貪りに
肩を叩かれ
身をふるわせる
夜廻りのいわしの
潰れ ....
風が匂うは梅見月
口を閉ざした木々の芽は
浴びる陽ざし待ちわびて
うずく枝先たおやかに
ふくらみ帯びて君を ....
「不用品なんでも買い取ります」
そんな張り紙のある煤けた店で
残っていたわずかなやさしさを売った
音 ....
夫の茶碗で朝餉を食す
手に余る大ぶりな器に
炊きたてご飯が湯気をたて
バターが溶けて醤油がかおる
虚ろに思えた ....
鳩子よ
おまえが生まれたのは寒さの残る
春と呼ぶにはまだ早い季節だった
忙しさにかまけ、放置していたベランダで
気づいたときに ....
夕闇迫る三差路で
迎えが来ぬかと立ち尽くす
逢えぬあなたに逢いたくて
黒髪闇に溶かします
紅い時が往き過ぎて
....
うす汚れた魂を
夜更けに洗う
洗面器に冷たい水を張り
ひとつまみの塩でもみ洗う
不信と後悔がにじみ出て
....
ワイルドストロベリー / 和名(エゾヘビイチゴ)
苗を買って植えた
幸運と奇跡を呼ぶといわれている
....
星がみえぬと
嘆くのならば
夜ごとまぶたを
くちびるで塞ぐ
それは塩辛く
わたしは夜に
海をみる
....
絶望の上着を引っ掛けて
孤独の靴を履こうじゃないか
来し方行く末足どり軽く
咲いた ....
ハラハラサイタハナノシタ
キンギョハオヨグヒラヒラト
アカイコロモヲフルワセテ
....
その横っ面を
おもいっきり
はり倒す
約束をまもらぬ
ろくでなしの
横 ....
雪がふる雪がふる
音もなくふりつもる
蝉たちは土の中
耳を傾け夏をまつ
あの日の麦わら帽子は
いまも埋もれてい ....
水道の蛇口を閉め忘れたようで
寝ているうちに耳の方へと
冷たいものが流れてきます
明日は仕事なのだからはやく
眠らなくてはならないと ....
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